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「分析して終わり」にしない―企業経営体系図で考える「攻め」の経営企画

前回の記事では、企業経営体系図の第2階層「戦略・計画」のうち、中期経営計画の策定プロセスをお伝えしました。今回は第3階層のうち、戦略を推進する「攻め」の機能である経営企画を取り上げます。

「経営企画は大企業の部署の話で、うちには関係ない」と思われる社長も多いかもしれません。しかし実際には、経営企画は中小企業にこそ必要な機能です。専任の部署がなくても、社長と幹部が「攻め」を組み立てる仕組みを持っているかどうかで、計画の実行力は大きく変わります。

経営企画は、戦略を推進する「攻め」の機能

企業経営体系図の第3階層には、経営企画と経営管理という2つの機能が並列に位置づけられています。

  • 経営企画:市場や機会を捉えて打ち手を組み立て、戦略を推進する「攻め」の機能

  • 経営管理:その打ち手を仕組みとして実行し、検証する「守り」の機能

どちらが上位でどちらが下位という関係ではありません。攻めと守りは第3階層の両輪として、理念体系から導かれた戦略・計画を実現するために、互いを支え合っています。

経営企画の中身は、大きく次の3つに分かれます。

  • 事業計画・開発:外部・内部環境分析、事業計画策定推進、新規事業開発、M&A・提携、投資計画策定

  • マーケティング:マーケティングファネル戦略、営業戦略、広報・PR、価格設計、顧客管理(CRM・SFA)

  • その他戦略:DX/AI推進、ブランディング、サプライチェーンマネジメント、生産性向上、プロジェクトマネジメント

図表2-3 企業経営体系図(2/2)―経営企画・経営管理

出発点は「経営診断」で自社の現在地をつかむこと

経営企画の出発点にあたるのが、経営診断です。中小企業の社長は、日々現場に近いところで仕事をしているため、業界動向や顧客の変化について豊富な実感(肌感覚)を持っています。一方で、日々の忙しさの中で得た断片的な情報に偏りやすいという弱点もあります。

その実感を、客観的なデータや型に沿った分析と突き合わせて、「思い込みではない」現状把握に磨き上げるのが経営診断の役割です。ここでの分析が甘いと、戦略・計画も根拠のない願望になってしまいます。

実務では、次のフレームワークを使います。「思いつきではなく、決まった型に沿って洗い出すためのチェックリスト」と捉えていただければ十分です。

  • 外部環境分析:PEST分析(政治・経済・社会・技術)、5F分析(業界の競争構造)、3C分析(顧客・競合・自社)

  • 内部環境分析:VRIO分析(強みが本当に競争優位につながるか)、バリューチェーン分析(どの工程で付加価値を生んでいるか)

  • 統合:クロスSWOT分析(分析結果を戦略の方向性に変換する)

自社でやってみる① 3C分析は「重なり」を探す

3C分析で注意すべきなのは、3つのCを別々に埋めて終わりにしないことです。顧客のニーズ・競合の動向・自社の強みをそれぞれ独立したリストとして作り、バラバラのまま並べているケースがよくあります。

3C分析の本来の価値は、3つを重ね合わせたときに見えてくる「顧客が求めていて、競合が十分に応えられておらず、自社であれば応えられること」を特定するところにあります。

進め方

  1. 市場・顧客について「市場規模・将来性」「顧客ニーズ」「顧客の購買行動」を書き出す

  2. 競合について「シェア・ポジション」「商品の特徴」「事業規模」を書き出す

  3. 自社について「商品開発力・情報収集力」「商品の特徴」「事業規模」を書き出す

  4. 3つを見比べ、「顧客が求めているのに、競合が十分に応えられていないこと」に印をつける

  5. 印をつけた中から、自社であれば応えられるものを選ぶ

図表2-6 3C分析(中小企業向け経営コンサルティング業界の例)

この「競合が十分に応えられていない顧客ニーズ」が、競争の少ない領域(ブルーオーシャン)の手がかりになります。

自社でやってみる② クロスSWOTで「何をすべきか」に変換する

どれだけ丁寧に分析しても、戦略の方向性に変換されなければ、分析のままで終わってしまいます。その変換を行うのがクロスSWOT分析です。まず強み・弱み(内部環境)と機会・脅威(外部環境)を整理し、それを掛け合わせます。

  • 強み×機会=積極戦略:自社の強みを活かして機会を最大限に取り込む

  • 弱み×機会=改善戦略:機会を逃さないために弱みを補強する

  • 強み×脅威=差別化戦略:自社の強みを使って脅威の影響を弱める、あるいは差別化する

  • 弱み×脅威=防衛的な戦略:最悪の事態を避ける。場合によっては事業の縮小や撤退を検討する

図表2-10 クロスSWOT分析(中小企業向け経営コンサルティング業界の例)

作るときのコツは、PESTで洗い出した変化を「自社にとって具体的にどのような機会、あるいは脅威になるのか」まで一段掘り下げておくことです。たとえば「人手不足の深刻化」であれば、採用への影響だけでなく、自動化・省力化への投資機会としても捉え直してみます。また、「うちの強みは技術力です」という強みは、VRIOの4つの問い(価値・希少性・模倣困難性・組織)で確かめておきます。価値はあっても希少性がなければ、それは「業界の当たり前」であって強みとは言えません。

分析を「打ち手」に落とし込む

分析と戦略の方向性が固まったら、それを具体的な打ち手にまで落とし込んでいきます。

  • 新規事業開発:既存事業を伸ばすだけでなく、新しい収益の柱を作る

  • M&A・提携:自社単独では時間のかかる成長を、外部との連携で加速する

  • 投資計画策定:いくら投資し、何年で回収するのかを決める

投資計画を検討する際には、「投資したいもの」を並べるだけでなく、その投資が事業戦略のどの部分にどの程度貢献するのかを必ず紐づけることが大切です。DX/AI投資も同様で、「同業他社が導入しているから」という理由だけで導入を決めると、自社の業務プロセスに合わず、投資が形骸化してしまうことがあります。

経営企画は「売れる仕組みづくり」でもある

事業戦略の中でも、中小企業が特に見落としがちなのが、マーケティングと情報活用の視点です。ここで言うマーケティングとは、単なる広告・宣伝の話ではなく、自社の商品・サービスが「売れる仕組み」そのものを、情報を活用しながら設計していくことです。

価格戦略―値決めの属人化から抜け出す
中小企業では、価格の決め方が社長の感覚や慣習に頼った「値決めの属人化」に陥っているケースが少なくありません。長年同じ価格を据え置いている、競合の価格をなんとなく見て合わせている、といった状態です。これを、原価計算に基づいた根拠のある価格設計に変えていきます。原価を正確に把握したうえで、どの顧客から着手すれば業績インパクトが大きいか、どの商品構成(プロダクトミックス)を伸ばすべきかを考えます。

情報管理―営業を個人の感覚に任せきりにしない
営業活動やマーケティング活動を、担当者個人の感覚や経験に任せきりにするのではなく、CRM(顧客関係管理)などのシステムを活用してKPIとして管理します。そうすることで、どこに、どのように働きかければ成果が出やすいかを、組織として把握できるようになります。

ここで大切なのが、「売上」ではなく「売上総利益」をいかに高めるかという視点です。売上を追うことに気を取られると、値引きをしてでも件数を稼ごうとする方向に傾きがちですが、それでは手元に残る利益は増えません。コストが上昇し、増収減益に陥りやすい今の環境だからこそ、この視点が重要になっています。

専任の部署がなくても始められる

経営企画の機能を社内だけで完結させようとすると、中小企業ではどうしても限界があります。「重要だと分かっているが、誰も旗を振らないまま、いつの間にか後回しになる」という状態が生まれやすいためです。

基本になるのは、旗振り役となる担当者(社長自身であることも多い)を明確に決め、小さなテーマから着手することです。たとえば、まず主力商品1つについて3C分析を行い、価格を原価から見直してみる。そこで成果が出たら、対象を広げていく。成功体験を積み重ねながら、自社の力で軌道に乗せていくことが大切です。

まずは自社の「攻め」をチェックしてみてください

次の項目に当てはまるものが多ければ、経営企画の機能を整えることで、計画の実行力が変わるかもしれません。

  • 自社の強み・弱みを、型に沿って分析したことがない

  • 分析はしたが、戦略の方向性や打ち手に結びついていない

  • 価格を長年据え置いている、または競合に合わせて決めている

  • 営業の進め方が、担当者個人の感覚や経験に任されている

  • 売上は追っているが、売上総利益で判断していない

  • 投資を、事業戦略への貢献と紐づけずに決めている

次回は、企業経営体系図の第3階層のもう一方、計画を仕組みとして実行・検証する「守り」の機能である経営管理についてお伝えする予定です。

※拙著『経営の仕組みが、中小企業の成長を加速させる』第2章では、PEST・5F・3C・VRIO・バリューチェーン・クロスSWOTの各分析について、中小企業向け経営コンサルティング業界を例にした記入例とあわせて詳しくご紹介しています。

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